第十九席
『透明人間のいらっしゃいませ』
まくら
猫好きのお客さんが家に来ると、つい飼い主さんも「うちの子、可愛いから見せてあげるね!」と、ベッドの下に隠れている猫を引っ張り出して抱っこさせようとしてしまいます。しかし「ねこサポLIFE」によりますと、これは猫にとって「自分の城(縄張り)に侵入者が入ってきた上に捕まった」という最大のストレス。来客時の大原則は、インターホンが鳴る30分前に猫とトイレと水を別室へ移し、お客さんには「空気のように無視してもらう」ことだそうでございます。
本編
真理「あなた、今日はあなたの会社の猫好きの部長さんが遊びにいらっしゃる日だけど、うちの猫のミイちゃんへの配慮、本に書いてあった通りに準備できてるわね?」
直樹「ああ、もちろんだとも! 家に知らない人が来るのは猫にとって縄張り侵略の恐怖だからね。ピンポンが鳴る30分前の今、ミイちゃんと、いつものトイレと水とお気に入りの毛布を、お客さんが入らない静かな寝室へ移動させてドアを閉めたよ! リビングのトイレのままだと、ミイちゃんが怖くて出てこられずにおしっこを我慢しちゃうからね」
真理「完璧ね! で、部長さんへの事前説明は?」
直樹「もうメールで伝えてあるよ。『うちの猫は臆病なので今日は別室で寝かせています。もし廊下などで見かけても、猫は目を合わせると威嚇と受け取るので、目を合わせず、名前も呼ばず、覗き込まず、空気のように完全に無視してください』ってね!」
(ピンポーンとチャイムが鳴り、部長がやってくる)
部長「いやあ、お邪魔しますよ! 実は私、大の猫好きでね、ミイちゃんに会えるのを楽しみにしてたんですが……言われた通り、今日は私が『透明人間』になりきって、ミイちゃんを完全に空気のように無視しますからね!」
直樹「ありがとうございます部長! さあ、リビングへどうぞ!」
(しばらくして、寝室のドアが少し開き、ミイちゃんがひょっこりリビングを覗く)
直樹「(小声で)あっ、部長! 猫というのはね、自分を追いかけず、目も合わせず、静かに無視してくれる人間のことを『この人は安全な人だ』と思って、逆に興味を持って近づいてくるんですよ! ほら、ミイちゃんが部長の膝の上に乗りましたよ!」
部長「(天井を見つめて微動だにせず、棒読みで)……お、おう、私は空気だ、私は透明人間だ。絶対に目も合わせないし、声もかけないぞ……」
🎐 オチを見る
真理「あのう部長さん、ミイちゃんを無視するのはいいんですけど、さっきから私がお出ししたお茶とお菓子まで『空気のように無視』しなくてもいいんですよ!」
(おあとがよろしいようで)
※ サイトの記事をもとにした創作落語です。登場人物・出来事はすべて架空のもので、猫の困りごとへの正確な対処法は、各演目のもとになった記事をご覧ください。